2:変化
30分後、俺は実験施設を後にした。何か嫌になったし、気味も悪かった。だから、そのまま家に帰ることにした。
翌日…、
起きてみて、体の様子を見てみたが何ともなかった。
「ただのはったりか、なんかか?」
まだ俺はこの時点では、何も気づいていなかった。感覚が、異様な程に敏感なことを。それに気づいたのは、学校が終わる頃だった。
"獣というのは人間よりもはるかに敏感だから。"
そんなことをどっかで聞いたような気もするが、考えるといると、何故か嫌な様子が浮かんで来る。俺は考えることを一旦やめにした。しかし、奴がかけた呪いは、確実に俺の体を蝕んでいくのだ。さらに、その翌日。
呪いの進行は、止まったかのように見えた。それはただ、俺の体を一気に作り変える為の予兆にしかなかった。
いつも通りに学校行き、いつも通りに学校が終わる。そう、そこまでは、よかった。問題は、そこからだった。俺は、唯一の友の鍬原等と共に、いつもの洞窟へと来ていた。ここでいつも二人で、何かで遊んでいた。遊びといっても、やることいえば、知り合った最初の頃は、洞窟探検だったと思うが、そんなような事をしていた。今もそのような事をたまにしている。いつもは、等の奴が家の手伝いで忙しいらしいから、一人で、思いにふけっている。こんな事は、どうでもいいから話しを進めると、そんな関係の等と、今日は、時たまやる洞窟探検(現在は、モドキ状態)をやることにしていた。そして、いつものように、施設の入口についた。あの時から開いたままかと思ったが、いつの間にかに、閉まっていた。
「おかしな事も有るんだな。」
「何が?」
「いやさぁ、一昨日にここに来た時に、この扉が開いたんだよね。」
「本当かよ。でも、何で閉まっているだよ。」
「知るか。」
そんな時、異変が俺の体を襲う。体の動きが止められたみたいになり、激痛が全身を駆け巡る。隣で等が、驚きながら俺に近づき「大丈夫か?」と触ってきたが、触られた感覚さえもわからなくなっていた。直ぐに痛みは、別の方向へと進んでいく。ただの痛みから、内臓や、骨格を変える痛みになっていた。それと同時進行で皮膚が、硬くなり、鱗へと変わっていく。その間等は、愕然と俺の変化を見て、放心状態に陥っている。そしてこの変化は、どうしようもなかった。変化を遂げながら、いつの間にかに、気を失っていた。
それから何時間たってのだろうか。ふと、目が覚めた時には、周りは薄暗くなっていた。
"どうなったんだ、俺は。"と、言いたかったが、口からは、獣の鳴き声しか出なかった。
"呪われたのか。"
それ以上することもなく、ただじっとその場に、座ってぼーっとしていた。それから10分くらいして、誰かが俺の所に近づいて来た。
"このニオイは。等か?"
やはりこれも体が変わったせいか、ニオイだけで、誰が来たのかがわかってしまう。
「大丈夫か、竜崎?」
「グル。」 (あぁ。)
「そうか…うん。」
少しの、間が開き
「なぁ竜崎、これからどうするつもりだ?その姿の、説明ぐらいならできるけどよ、その後の事なんだよ。 って、お前が何言っているかは、わからないし。どうにかしてさ、人にわかる言葉出来ないのか?何か有るだろ、念じてみるとかさ、何か。」
「グゥ。」
そしてまた長い空白が続く。
「なぁ、竜崎。明日、次男坊に、相談してみようぜ。でさ、…アレ?竜崎? あちゃー。」
"それだけは、ムリだよ。あれだけは。"
次男坊は、俺達の担任で、生物学の教師なんだが、一番好きな生物が、爬虫類系で、それに対しての愛情は、すでに常識の範囲では考えられないことまでする。そんな教師だから、今の姿何か見られたら何をしてくるかわからない。それと、次男坊というのは、あだ名なのだが、どうしてこのような名前を付けられているのかというと、この教師の本名が、佐武二郎というが、この人は、一人っ子なのに"二郎"という、次男みたいなので、こういうあだ名を付けられたそうだ。そんな教師に今あったらと、思うと身震いをしてしまう。それに追い討ちをかけるかのように、奴が来てしまった。
「♪何かいないかなぁ!会いたいなぁ♪」
「うわぁ。何か歌ってるよ先生。」
"何でこんな時に来るんだよ。はっ吐き気が。"
「グゥ。」
「大丈夫か、竜崎?」
と聞かれても、すでに返答する気力もない。
「チョと話してくる。」
と、洞窟を後にしていった。その数分後、奴は血相をかいてやって来た。
「竜崎♪」
と言いながら、走ってくる。俺はあくまでも、知らない振りをした。
「もぅ!可愛くなちゃってずるい!」
と、抱き着いてきた。もう、その後は皆さんの想像に、お任せしよう。これ以上は、考えたくない。考えるだけで、気絶する。実際に気絶した。で、このあと先生に、付き合わされたのは言うまでもない。
← ↑ →
Copyright (C) shibatura 2010-2011 All rights reserved