8:自分の存在

「お前さんのことだが、お前さんは、多分、あいつと同じ種族にさせられた。あいつの種族は、高い魔力を持った種族で、人間一人ぐらいを、自らと同じ姿にするぐらいなら簡単に変えられる。だから、お前さんにも、同じことをするぐらいなら簡単に出来ると思うぞ。」
「そうなのか。」
ということは、俺は既にこの世界の住人じゃなくなったことになる。それでは、俺はどういう存在になるのか?ここに居てもよいのか、居ては邪魔何じゃないか、といろいろ考えてしまう。そんなことを考えていると、新葉さんが、
「あまり、考えるな。大丈夫だ、俺がついててやるからな。」
「本当に、大丈夫何ですか?いつまでも、居られないんでしょう?」
「それについては、大丈夫だ。どうせ、戻るにも、シャトルの修理あるし、だいたい、シャトルを動かそうにも、燃料無いし、そんな訳だから、まだ大丈夫。」
「そうですか。」
「そろそろ、戻ることにするか。」
そしてまた、今までと同じように戻った。戻った時には、時間は昼ぐらいに、なっていた。
「すっかり、昼になっていたな。」
しかし、新葉さんの姿は、今だに竜人のままでいた。
「あの、すみません、新葉さん?」
「何?」
「その姿のままで、いいんですか?」
「えっ?あっ。そうだな。戻らなきゃ。」
そうして、また、体が光に包まれると、消えた時には、また姿が戻っていた。こう、人間の姿になれるならなりたいと、いう気持ちが、だんだん、膨らんできた。すると、いきなり何処ともなく声が聞こえてきた。
『人間の姿になれるようになりたいか?』
俺は、驚いて周りを見渡したが、新葉さんしか居ない。するともう一度、
『新葉だよ。新葉。』
驚いて、心のなかで
『えっ、新葉さん?』
『そうだよ、俺だよ。お前さんに、人間の姿になれるように、してやるよ。ただし、条件があって、その条件は、我が一族のものになること。それに後、この事をやることにより、死ぬことは許されないし、死ぬことも出来ない。さらに、いろいろな責任もついてくる。それでもよいならばやるぞ。それに、一度そうなってしまったら、後戻りは、出来ないから、よく考えてからにしろよ。』
『はい。』
俺にとってもありがたいことだが、責任を負うって、何を負うのか、検討がつかない。どうするか、完全にわからなくなった。
(責任って、何をすれば?)
「大丈夫か?簡単に言えば、この世界の均衡を管理するのが、責任の内容さ。」
"そう簡単には、決めていいのかよ、そんなことを。"
と、思ってしまう。何で、新葉さんが、そう簡単に言えるのかわからない。何かの力でも持っているとでもいうのか?そうまた考えていると、新葉さんが付け足しで、
「さらに言えば、自分自身が、世界なんだよ。」
「自分自身が?」
「そう。それに俺、次元管理人のトップだから、ある程度なら、融通効くから。」
「それって、この俺になれって、言いたいんですか?」
「まぁ、そういう事。」
もう決めるしかないのか、話し自体は、よい話しだし。それからもう少し考えて、ついに決断した。
「その話し、引き受けました。」
「そうか。では、手続きのほうに、移るか。」
「手続きですか?」
「まぁ、お前さんは、基本的にはすることは無いが、ただ一つだけやることがある。それは、契約内容復唱及び宣言部分なんだが、やり方は、まぁ、復唱部分は、言ったことを復唱すればいい。後は、宣言部分の方だが、やり方は、まず、俺がお前さんに問う、そしたらお前さんは、『私は、全神竜の任を引き受ける。』と、宣言すればいい。そうしたら、契約は完了だから。では心の準備が出来たら、声をかけてくれ。」
「はい。」
それから、目を閉じて見ると、今までの事を思い出してみる。そうしたら、何が溢れてきた。何か生ぬるい何が。そして、一つの思いが込み上げてきた。ただ"ありがとう"と。
「お願いします。」
「わかった。」
それから、新葉さんは、契約の儀を始めた。
「我は、次元管理人、シンバ・ファーステスト・ドラゴニカの、名の元に汝、片治竜崎を、全神竜として認め、ここに新たに、リュウキ・アーステスト・ドラゴニカと名乗り、その身を持って任を尽くせ。これを契りとする。さすれば汝、契りを復唱し、答えよ。」
「私は、新たに、リュウキ・アーステスト・ドラゴニカと名乗り、その身を持って任を尽くす。そして、私は、貴方と契りを交わすことを宣言する。」
すると、額に何かぼんやりとした感覚を感じた。それに、何か今までとは、違う力があるように感じるようになった。そんなことを感じている間に、儀式は終わっていた。
「どうだ?気持ち悪くは、ないか?」
「はい、大丈夫です。」
それから、新たな生活が始まった。



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