9:学び始め

儀式を終えて、変わったところというと、新葉さんによれば、今の俺は、また、別の種族に変わったという。神竜族という種族らしい。なんでも、自分の体を作り変えたりすることも出来るらしい。ただし、その姿はあくまでも仮の姿だという。まあ、仮でも、人間の姿になれるのはうれしい。だけど、本当の姿じゃないのが、残念だが。でも、喜んでいるばかりでは、いけない。まだ、やることは、いろいろある。例えば、この世界の歴史だったり、この世界を管理するためのシステム"和"の操作方法だったりだ。
「まあ最初だから、ゆっくりやっていくぞ。」
「はい。」
「操作方法は、実に簡単だ。要領は、パソコンと同じだ。ただし、パソコン等とは、全く違うこともある。それは、時空空間の修正することくらいしか、機能が無いこと。その理由として、管理者は一切、人々が行うことに、あまりシステムを使ってはいけないという決まりが有るからという理由だけ。システムを使わないなら、規則の範囲内なら、自ら力の行使を行うことが出来る。まぁ、俺の場合は…、いろいろやっちまってるからな、あまり偉そうなこと、言えないんだけどね。」
「そうなんですか。」
"どうなことやったんだ?"
と、思っていたら、新葉さんが小さく、
「歴史の改ざんだったり。」
「えっ?」
"いやそれは、やばいんじゃないか?"
「だから自分で、謹慎したけど。約2000年ぐらいかな?」
開いた口がふさがらない思いだ。ある意味でも凄いひとだ。一つとってもなんだか、スケールがでかい。それが、新葉さんなのかも知れない。
「あの、一つ聞いていいですか?」
「何?なんでもいいよ。」
「いや、名前のことなんですが、"リュウキ・アーステスト・ドラゴニカ"の、"リュウキ"っていう部分は名前で、"ドラゴニカ"っていう部分の方が、苗字っていうのは、わかっているんですが、"アーステスト"っていう部分は、何なんですか?」
「それのことか。それは、ミドルネームだよ。よくアメリカ人とかが、付けてるもんだよ。それが無いと、わからなくなるときがあるんだよ。時たまね。そういう事があるから、神竜族では、必ずミドルネームを付けているんだよ。それだけでいいのか?」
「えっ?何がですか?」
「いや、だからさ、質問は、もう無いのかと聞いている。」
「あっ、いやまだ沢山あるんですけど、今は、いいです。」
「そうか。」
俺と新葉さんが話し終わった時、向こうから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「クラス総勢で、来たのかよ。」
そしてついに、洞窟の前までやって来た。
「会長。大丈夫でしたか?」
「一部、駄目だった。得にあの先生が。」
それを聞いて皆口々に、哀れみの言葉をくれた。それにしても、何故、驚かないのかと、思っていたら、ある一人が、
「それにしても、まさか、会長がドラゴンになったって聞かされた時は、ホントかよって、思っていたけど、その通りになっていたのは、びっくりしたよ。」
"そうだったのか。それじゃ、あまりびっくりしないはずだ。"
そう感心しながらも、伝えておかなきゃいけないことが、あったことを忘れていた。
「あと、皆に伝えることがあった。それは、人間の姿にも、一様なれるから、明日はちゃんと学校行くから。」
そしたら、皆一斉に、
「ホントですか?」
と、俺に詰め寄ってきた。
「それは、ホントだから。」
それを聞いて、うれしかったのか、そこまで喜ぶ程かと、思うぐらい、喜んでくれた。それから、いろいろな、話しで盛り上がって、夜までどんちゃん騒ぎをして、帰っていった。そして翌日。
まだ日が昇らないうちに、目を覚ました。横を見ると隣では、気持ち良さそうに、先生が寝ていた。
「ちょっと、先生?起きてください。」
そしたら先生は、眠たそうに、目を擦りながら、
「何でしょうか?ファーァ?何でもお申しつけくださいませ。」
「いや、学校の方、どうするんですか?時間大丈夫何ですか?」
「えっあ。ってもう、こんな時間。急がなきゃ。」
そんなことを言いながら、アタフタばかりしている。そのため、全く身支度が出来ていない。
「先生?落ち着いたらどうです?全然、身支度出来ていないじゃないですか。しっかりしてください。」
「わかりました!」
ちょっと励ましの言葉っぽいこと言っただけで、さっきまでとは、態度がまるで違う。そこまで、張り切らなくてとも、思いながら、俺自身も、身支度を始める事にした。
「久しぶりだな、学校。でも皆とは、昨日ぶりに、なるのか。」
と、つぶやきながら、人間の姿になることにした。さっさと身支度を済ませると、今だに、ボケッと突っ立っている先生を、無視して、俺は学校へと向かった。学校へ向かう途中、先生が猛スピードで、俺のことを追い抜いていった。



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