13:第0次元世界へ
驚きだった。新葉さんは実体自体は生命体だが本体となる部分は、生命体とは全く違うものだった。そして、その本体である新葉さんの世界に、入ることも出来るという。
「あの、新葉先生?その世界に入ってもよいでしょうか?」
と、先生が聞いてみていた。そしたら新葉さんは、軽く承認してくれた。
「じゃぁ、準備の方はいい?」
『はい。』
「ゲートを開くぞ。」
と言うと、目をつむり、何か念じると、神竜族の紋章が展開し、ゲートが開く。
「行くぞ。」
と、新葉さんが先に入り、それに続き、先生と俺が入った。ゲートをくぐると、その先は新葉さんの世界である。
「おー。」
一人で騒いでいる先生。こういうのを子供っぽいというのだろう。
「あの、先生?あまりはしゃがないでください。」
「そう?」
「そうです。」
とその時に、後ろから突然、
「よっ、二人とも。」
と、声をかけてきた。その時の新葉さんは、本来の姿へと変わっていた。
「新葉先生。こちらにいるときは、その姿なのですか?」
と先生が新葉さんに質問する。
「いや、この姿は、私の本来の姿ですから、私自身の中に入れば、元の姿に勝手になるんで。」
「そうなんですかぁ〜。」
先生は、妙に長く語尾をのばして相槌をうっている。
「あとここには、私が作り出した、ものたちも住んでいるんで。」
そこで、俺はこう聞いた。
「と、言いますと、どんな人達何ですか?」
すると、新葉さんは、多少苦笑いしながら、
「いやなぁ、ちゃんとしたやつもいるけど、ほとんど、変わったやつしかいないなぁ。でも、それは私が、作り出したものたちだけだから。まぁ、ほとんどは大丈夫だから、安心しろ。」
「ほとんどのものって、どんな?」
「どんなものって言うと、生命の種っていうか、まぁ、そういうものから出来た、つまり、普通の生体系みたいなものかな。多分。」
「そうなんですか。」
町の方に案内された。町の市場では、いろいろな人種や種族がひきしめあっていた。
「賑やっていますね。」
「そうだろ。ここはこの国で一番でかい所だからな。」
「へぇ〜、そうなんだ。」
「で、佐武先生?どうですか、ここは?」
「いやぁ、興味深いですなぁ、ここは。」
「そうですか。ならもっと良いところありますから。」
良いところありますからと言われてやって来たのは、大きな建物だった。表の看板には、中央市役所と書かれている。
「ここは、この町の市役所。いろいろなサービスを行っている。例えば、空間転送業なんかね。で、空間転送業というものは ね、いろいろなものを転送してくれるサービスさ。荷物や、人も転送してくれる。
「人もですか?」
と、先生が質問する。
「そうです。」
かなり、ここの世界の技術は、俺らの世界より遥かに上であった。
「で、これがその転送装置。どうだ、以外だろ。姿形は、エレベーターそっくりだろ。正確には、転送エレベーターっていうだよ。仕組みは、この本体には、空間浮遊装置で、空間サーバー内の、ゲートを通って、移動する仕組みになっている。」
ということらしい。で、早速なろうという事になった。中は、大型エレベーターぐらいの大きさで、ただ、ボタン式ではなく、タッチパネル式と、なっており、目的地を選択するようになっている。
「こりゃぁ、凄いや。」
と先生が一人で感心している。後ろでは、先生の様子を新葉さんが、忍び笑いを堪えながら
「佐武先生。子供みたいですね。」
「アハハ、これは恥ずかしいところを、見られちゃいましたね。」
決まり悪そうに笑いながら、先生は答えた。
「では、そろそろ開始しますよ。揺れたりは、あまり無いんで、固くならなくても大丈夫だから。」
と、おもむろに懐から、カードキーらしきものを取り出すと、挿入口らしきところへと、そのカードを差し込んだ。そしたら、
「確認しました。目的地をどうぞ。」
と、音声が流れる。それと同時に、画面が目的地選択画面に変わる。新葉さんは、馴れた手つきで操作していく。
「目的地を確認しました。転送開始します。」
と流れた時、外が白く光ったと思うと、いつの間にかに、目的地に到着していた。
「目的地に到着しました。開くドアにご注意下さい。」
とドアが開く。エレベーターを降りると、そこは、いたって普通な単なるエレベーターホールである。
「あの新葉さん?良いところって、ここなんですか?」
「いや、ここじゃない。もっと先にある。ここからは歩きだからね。」
ということで、そこから歩きとなった。関係者以外立入禁止と書かれた扉を通り、長い階段を下り、やっと目的地に着いた。
「管理局?って何を管理するんですか?」
「何かは、入ってからのお楽しみ。」
「新葉先生?勿体振らないで、教えてくれませんか?」
と、先生が新葉さんにねだる。
「いいえ、まだ教えません。入ってからのお楽しみだって、言っているでしょ。佐武先生。」
「そうですかぁ。」
と、少し落胆する先生。
「気を落とすところじゃないですから。今、開けますから。」
新葉さんは、先程のカードキーを取り出すと、読み取り機で読み取ると、ランプが赤から緑に変わり、扉の鍵が開く音がした。
「ようこそ、空間管理局へ。」
開かれた先は、管制室そのもの。
『おー。』
先生と俺とで、同時に歓声を上げていた。
「ここは、さっきのエレベーターが、通ったところというか、一瞬、白くなった時があったろ。そこは転送専用の空間何だけど、まあ、そういうとこやほかにも別の空間もあるんだが、そういうものを一括して、管理しているのがここ、空間管理局なんだよ。」
『へぇー。』
まず、先生が
「すみません、新葉先生。」
「ハイ?」
「転送専用空間って、こことは別世界何ですか?」
「いいえ、全くの別世界じゃないですが、一応、別次元ですが。でも、こことは、ほとんど同じ世界ですね。」
そこで、俺はこう聞いてみた。
「ほとんど同じということは、その空間は、一応、第0次元ということですか?」
「まあ、そういうことになるでしょう。」
「でも、新葉先生。パラレルワールドとは、違うんでしょ。」
「そうです。パラレルワールドとは、全くの別物なんです。ワープワールドとでも言いましょうか、実際に、循環していますが。」
「へぇー。」
今度は、俺一人で感心していた。もう一人、先程まで声を上げていた、先生の声が聞こえなくなっていた。
「アレ?先生?」
と横を見てみると、先生は別のほうに、興味を示していた。
「何見ているんですか?」
「いやぁ、いろいろな種族がいるんだなぁって。」
やはり、先生はそちらのほうに興味がわくようだ。
「二人とも、興味をそそられたか?」
『はい。』
そこは、同意見である。
「そうか、それはよかった。そんじゃまぁ、帰って私のことの続きでもしましょうか。では、ゲート開きますよ。」
そして、俺らは、元の次元へと戻ってきた。それから、1時間くらい、新葉さんのことを聞いてから、家路に着いた。
← ↑ →
Copyright (C) shibatura 2010-2011 All rights reserved