14:再来

先生と俺とで新葉さん宅にお邪魔した、その翌日、奴が再来したのだ。そいつがやって来たのは、その日の放課後であった。いつものように、二人で洞窟の入り口で、回りの景色を眺めていると、上を黒い影が通り過ぎた。何かと思って回りを見渡すが、何もいない。その様子を等が、
「どうした、竜崎?」
「いや、何かが通った気がしたんだけど…、気のせいだったのかなぁ?」
「気のせいじゃないの。」
「そうかなぁ?」
と思いつつも、また、景色を眺め始めた時、頭上から声が聞こえた。
「まだ、その姿か。」
それは、間違えなくあいつだった。
「お前だったのか。何の用だ。」
「挨拶も無しか。まぁ、良いけど。それより、僕の名前ぐらいは、知っといて欲しいなぁ。僕の道具なんだから。」
「誰がお前の道具になるか!」
俺は、牙をむき出し、威嚇する。
「この僕に、牙を向けるなんて、なんて物分かりの分からない奴だ。」
「うるせぇ。」
とまた、威嚇したが
「まぁ、元気があること。おっと、僕の名前を教えてあげなきゃいけないこと、忘れてた。いけない、いけない。」
「おい、お前。教えるんだったらさっさとしろ。」
「はい、はい。僕の名前は、トラス・アルビッツ・イターニア。覚えておくようにね。必ずだよ。」
"何だったんだか、あいつは。この俺をからかいに来たのか分からないが。だけど、復讐する為の奴に、ちょっかいを出す必要何か、あるのか?"
と、疑問に思う。普通はしないだろう。あいつはもしかしたら、一種の淋しがり屋だったりするんじゃないか。だけど、あいつの歳、知らないし、さらに言っちゃえば、ドラゴンにとって何歳が、成人なのかを知らないから、何とも言えないけど。
それから約1時間後、等と別れた後、俺一人で、眺めていると、何となくだが、誰かの気配を感じて、回りを見渡したが、誰もいない。はてなと思いつつ、そろそろ帰ろうかなとも、思ったので帰ることにした。家に帰ると、体がだるく、ベッドに入ると眠気に襲われ、そのまま眠りへと入ってしまった。
「起きろ、起きろ。早く起きろ。さもないと、とんでもないことになるぞ。起きろ、起きろ!」
という訳の分からぬ声で目が覚める。しかし、回りを見渡しても、やはり、なにもない。不思議だったが、疲れているということで、片付けて再び寝た。
目が覚めると、いつもの自分の部屋である。
「それにしても、また何だったんだ、あの夢?まぁいっかぁ。」
変なことはほっといて、身支度を始めることにした。自分に何かをかけられていることは、まだ知らないで。
そんで、そのまま学校へ行くと、調度新葉さんに出くわした。
「おはようございます。新葉先生。」
「おぉ、竜崎か。おはよう。それにしても、何か感じないか?」
「いや、何も感じないけど。それがどうしたんです?」
「そうか、何でも無い。気にするな。」
「そうですか。」
という感じで、別れた。その時、新葉は
"絶対何かあるな。"
と何か、核心を得ていた。しかし、この時は、新葉さんでも完全にどんなことなのかは、知らなかったようだ。
いつものよう時が過ぎ、下校となる。廊下を歩いていると、職員室から俺の方を見ながら、新葉先生が手招きをしている。
"何だろう?"
と思いながら、走って行く。新葉先生の前に来ると、新葉先生が、
「ちょっとだけいいか?」
「はい。良いですけど。」
「朝さ、何か感じないかと、聞いただろ。」
「確かに。だけど、用件って何だったんですか?」
「それは、君に何かしろの呪文か何かをかけられているようなんだ。もしかしたら、何か危険な事になるかも知らないから、気をつけておいたほうが良いって、伝えておきたかったんだよ。だから、何かあったら、直ぐさま見ずからの力を解放するんだ。そうすれば、何とかなるかもしれないから。」
「はい。気をつけておきます。」
ということで、新葉先生からの忠告を受けてから 、いつもの場所に、等と一緒にいた。その時であった、忠告されていた事が起ころとしていた。
"ついにこの時が来た。"
そう、あいつが仕掛けて来たのだ。
「うっ。」
体の奥から、何か突き上げるような感覚に陥る。
「我慢出来ない。」
さらに、俺を追い込む。
「もう…我慢が…出来ねぇ。 あっ、グゥァ。」
その喘ぎを最後に、意識が遠退いて行った。完全に暴走状態となり、ただ暴れて、破壊衝動だけに、身を任せていた。
「そこまでだよ。若造が。」
誰が、俺の前に立ち塞がる。そのあとの出来事は、一瞬であった。一打撃、俺の額に打ち込む。それが効いて、再び、俺の意識が戻ったが直ぐにまた、意識を失い倒れた。



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