15:解放
意識を取り戻した時は、自分の部屋だった。
「ここは?というかここは、俺の部屋じゃないか。どうしてここに?確か、意識を失った時は、いつもの場所だったよな?」
そこに、見覚えのある顔がやって来た。
「目が覚めたようだな。大丈夫か?」
「はい、何とか。」
「そうか。それなら良かった。大変だったよ。いきなり騒がしくなったらと思ったら、君が暴れているんだから。びっくりしたよ。」
「すみません。」
「いや、君が謝る事なんて無い。こちらこそ、君にかけられていたものが、直ぐに分からなくて。あの時気がついていれば、こんな事にならなかったのに。」
「何だか、かなりの迷惑かけちゃったようで…。」
「気にするな。私は、こういう事は、慣れているから。」
「ありがとうございます。いろいろと。」
「ん。それじゃ、私はこの辺でおいとまするな。」
「はい。」
そういって、新葉さんは、帰って行った。
「はぁ〜。」
とため息破棄ながら、
「今、何時なんだ。」
と時計を見る。すでに午前1時を回っている。
「こんな時間か。新葉さん、こんな時間まで俺の事を。」
と机の上を見ると、そこに手紙らしきものが置いてある。
「何だろ、これ?」
広げて見ると、こう書かれていた。
「大変だったな、竜崎。君のために一つ、教えて置きたい事がある。それは、自分にかけられたものを取り外すというか、解除する方法を、教えとく。だから時たまで、いいんだが、練習しておいて。方法は別の紙に、書いといた。それを見ながらやるように。私もいろいろと忙しくなって来ていて、いちいち教える事が出来ないから、そこはよろしく。後、勉強のほう、頑張れよ。分からないところ、バンバン聞いて良いからね。全教科対応出来るから。 無藤 新葉より。」
という感じで締めくくられていた。書かれていたように、近くに"方法"と、書かれた紙が置いてあった。
「ん?これかな?」
いろいろな事が書かれていた。
「へぇ〜、そうするのかぁ。」
とりあえず一通り、目を通した後、
「明日の準備しなきゃなぁ。明日は、あれと、これとっと。」
明日の準備を数分で終らせ、寝る事にした。
そして、翌日。
「ハァ〜ァ。良く寝た。大分、体が軽くなった。」
爽快に目覚める事が出来た俺は、元気良く、行く事が出来た。
それから、平凡な日々が続き、暴走した時からすでに2ヵ月が経っていた。新葉さんから毎日、新しい事を学びながら過ごしてきた。それとともに体力作りや、全神竜としての力の使い方の、研究などやって過ごしてきた。 そんなある日、新葉さんが声をかけてきた。
「よっ、毎日頑張っているようだな、竜崎。」
「はい。いつも欠かさずにやっています。」
「そうか。それは、良いことだ。」
「で、話しってそれだけなんですか?話しかけて来たっていうことは、まだなにかあるんでしょ?」
「良くわかったな。その通り、まだ話したい事がある。とりあえず、それは、私の家で話したい。だから、今日、暇あるかい?」
「ありますよ。」
「それじゃ、後でね。」
それで、俺達は別れて行った。そのあとは、約束通りに新葉さん宅に向かった。
「すみませ〜ん。2年3組の片治竜崎です。」
それから、数分後。ドアが開く音がして、新葉さんが顔を出した。
「お待ちどうさま、さぁ、入って、入って。」
「それでは、失礼します。」
「ハイよ。」
家に入るとそのまま、客間に通された。
「そこに座って。今、何か飲み物入れるから、何がいい?好きなもの言って良いからね。」
「それじゃ、オレンジでお願いします。」
「はい、はい。」
と言って奥の部屋へと入って行った。そこは、客間専用の台所らしい。
「はい、オレンジ、お待たせ。」
「いただきます。」
と、言って飲み物を受けとってから
「話って、何ですか?」
「話しは、竜崎がいつも頑張っていた事によって、ある一つの可能性が、出てきたんだよ。」
「可能性?」
「そう、可能性。竜崎が本当の力を使えるようになる可能性。」
「どんな感じにですか?」
「そうだね、全神竜としての力の他に、自然界に宿る力を使えたり、あとは、霊力や魔力なんかかな。」
「霊力や魔力?」
「霊力や魔力は、自分の魂や自然が持っている力の事。霊力なんかは、その人の魂によって、大きく力が左右される。魔力もだいたい同じだけど、細かいところをいえば、違うモノなんだけど。」
「そうなんですか。」
そこまで、話し合ってから、新葉さんがトイレの為に席を外して、部屋の中は、俺一人となった。
「ハァ〜。霊力や魔力か。ということは、魔法みたいな事も出来るようになるのかな?じゃあ、霊力の方は何が出来るようになるんだ?トイレから戻って来たら、聞いてみようかなか。」
新葉さんがトイレから帰って来た。
「待たせたね。なんか、竜崎から聞きたいことなんてある?」
「聞きたいことですか?それじゃ、あの〜、詳しく説明してくれますか?」
「霊力とかの?」
「はい。」
「わかったよ。まずは、霊力からかな。」
「良いです。」
「そっか、それじゃぁ、霊力って言うのは、さっき言ったように、それぞれの生き物達が持っている魂を元にした力の事で、通常、誰でも持っているがだいたいの人々は、それを感じる事は出来ない。なぜならば、霊力は魂の力、魂そのものを感じる事が出来ないのだから、霊力も感じる事はほとんど出来ない。さらにいえば、体がそのものが壁となって、内外の霊力の漏れを押さえている。しかし、時たま聞くことがあるだろ、死ぬ前に行く所。」
「死ぬ前に行く所?」
そこから少しの間、考えてみてから
「三途の川ですか?」
「その通り!三途の川っていうのは、死者の魂がこの世からあの世へと、行くために渡る川なのだが、この川は霊力によって形作られているもので、あの世とこの世で発生した、過剰霊力を水源としている。そこまで聞いてわかるかな?」
そこまで聞いて、俺の脳裏にハッと気がついた。
「ということは、普通は見えないということか!」
「その通りだよ。三途の川は普通じゃぁ〜、見えない。」
そこまで新葉さんが話し終わると、俺は話がそれはじめたので元に戻すために
「あの〜、新葉さん?その見えるとか見えないとかの話しと、霊力の話しにどのような関係があるんです?」
「あ〜、そういうことか。その関係はスバリ、"からだ"だよ。」
「"からだ"ですか!?」
「そうだよ。体があるからこそ、感じにくくなっている。だから、体という制約が無くなることによって、いろいろな現象が起こるだろ。」
「ですが、まだ死んでいない人も三途の川が見えるって言うじゃないですか。あれは、どういう事なんですか?」
「それは体が弱り、本来の機能が使えないからだ。機能が十分じゃないと、それだけ霊力管理が、出来無くなるだろ。そういう事だ。」
「なるほど、良くわかりました。あと、霊力に関連することなんですがいいですか?」
「いいぞ。何でも言え。」
「では、どのようにすれば、上手く霊力を扱う事が出来るんですか?」
「それは修行すれば、自然に身についていくから。またそのうちにね。」
「次は、魔力についてな。」
「はい。」
「まずは、魔力の根本について教えよう。」
「お願いします。」
新葉さんは一度、咳ばらいをすると
「え〜と、魔力の元は、体を動かす生体エネルギーを元にしている。しかし、無造作にある訳ではない。だから定期的に補給しなければならない。」
「補給無しでいるとどうなるんですか?」
「ただ、体力を無駄に消耗させるだけ。」
「では、補給するにはどのような事をすれば良いんですか?」
「普通、魔力は食べ物を食べれば体に取り込む事が出来る。ただし、それぞれに含まれる、魔力の量は限りがある。だから、体力を整える事が一番良い。」
そこまで話すと新葉さんは、飲み物を飲んだ。さっきから喋り通しであったからだろう。グラスの中の物を飲み干すと、再び説明を再開した。
「すまない。あまりにも話し続けたせいで喉が渇いてしまったからな。じゃぁ、説明の続きといくか。で、魔力の基本的性質は、話したから次は、魔力の使い方なんかでいいか?」
「お願いします。」
「よし!最初にやることは、魔力を掴むこと。これは、魔力を操る上で一番大切なことだ。霊力でも言えることだが、掴む事は基本的に無理な話し。なぜならば、形や影もないものだからだ。実体が無いものなんて、掴めないからね。それを掴めるようにするには、力を目に見えるものへと変えなければいけない。それをしない限り、掴むことは絶対に無理!」
俺は、そこまで聞くと
「あの、一つ良いんですか?」
と唐突に聞いてみた。いきなりだった為、新葉さんは多少、驚きの顔で見ていたが、直ぐに立ち直り
「なんだい?」
「掴むこととは、手に力を憑依させるということ何ですか?」
「それもある意味、正解だ。」
「ある意味って?」
「憑依は、掴むの発展型だからさ。」
「発展型?」
「掴むことは力に存在を与え、憑依させることは、存在を他のものに見せることをいう。だから憑依は、掴むの発展型なんだよ。」
「で、次は何をするんですか?」
「実体を持たせて相手に見せることが出来たら、次はその力を、別のものへと変換することだ。」
「別のものって?」
「魔法とかいう物」
「え?」
「要するに、魔力そのままでは使えないといっているんだ。変換することで、初めて技を使えるようになる。で、今日ここまでね。」
ということで、今日の教わる事が終わった。
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