17:事件
初デートの翌日、学校へと向かっていると、校門の前で人々が固まって何か騒いでいる。よく周りを見ると、警察車両や国際宇宙開発機構の関係車両が、たくさん停まっている。
「何があったんだ?」
少し離れた所から見ていると突然、後ろから
「よっ、竜崎どうした?そんな所で突っ立っていてさ。」
「びっくりしたな。後ろから突然、声かけんなよ。驚くだろうが。」
「すまん、すまん。で、そんな所で何立ってんだよ?」
「見ろよ。校門の前。」
「何だあれ?」
「分からないが、何か学校であったらしい。」
「事件か、何かか?」
「多分。」
「分からないんだったら、近くでみようぜ。第一、こんな所からじゃ、見えないんだしよ。」
言われてみて、それもそうだと今頃、思い付かなかった俺が恥ずかしくなる。
「それも、そうだな。」
という訳で、人混みの中を掻き分けて、一番前まで出ていくと、そこには巨大なクレーターが、校庭のど真ん中に空いている。学校のほうは、窓ガラスが全て割れていて、みるも無残な姿になっていた。
「これは、酷いな。」
「ああ。」
二人で話していると、後ろから聞き覚えのある声が近づいて来る。
「ちょっと、どいてはくれませんか?私、この学校の教師何ですけど。すみません?ちょっと!どいてください!」
必死に人混みを掻き分けて、次男坊こと、佐武二郎先生がやって来た。
「先生、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。私の心配なんてしてくれて有り難いわ。」
「それはどうも、ただし、そのへな喋り方、やめていただけますか?」
「あ、そうだったなあ。忘れてた。悪いな。というか、この有様は何だ?これはド派手にやってくれたな。これじゃ、ろくに授業も出来ないじゃん。誰だ、こんなことする奴は?」
「そんなこと直ぐに分かる訳無いですよ、先生。」
こんなやり取りをしていると、後ろのほうでまた、聞き覚えのある声が響く。
「おい、道をあけろ!」
と、新葉さんの怒鳴り声が近付いて来た。
「竜崎と等に佐武先生。」
「あの、何があったんですか?」
「いや、まだ分からん。ただし、かなりわかりにくい事が多くてね。あとそれから、今日は学校は無いという事になったからな、後はよろしくな。」
そういって、キープアウトの中へと入って行った。それから1時間後、新葉さんがまた戻って来た。その後様子を話してくれたが、それはまた今度。
それから翌日。今日は、学校はやるということで、今日は一番乗りしてやった。いるのは教師だけで、生徒は誰もいない。
「新葉さんいるかな?」
昨日の話しを聞くために早く来たのだ。それに新葉さんは、昨日の事で学校に泊まっていったはずだから、居るとは思うけど、徹夜のせいで寝ているかも知れないからだ。教員室のドアをノックすると、最初にお目当ての新葉さんが出て来た。
「おはよう、竜崎。」
「おはようございます。」
「それで、何か質問に来たのか?何の教科を教えて欲しいんだ?」
「学校の事は事でも、昨日の事なんですが、何があったのか教えてもらえますか?」
すると、少し考えると
「ウ〜ン、そうだな、これはあまり言えない機密事項に触れるからな。…よし、わかった。話せる事だけなら、教えよう。」
「本当?」
「むろん。」
「では仕切直して、昨日、何があったんですか?」
「昨日の校庭から、あるものが見つかった。それは、魔力反応が検出された。」
「魔力反応?」
「そう!ということは誰かが結界によって、周りに何をやったのかを分からなくし、何かの試しをしていたとなる。これがどういう意味か分かるか?相手がどういう意図でやったのかを。」
「それって、あいつの仕業?」
「かもしれない。ただ一つ気をつけなければいけないのが、魔力反応が出たら身構えろっていうことだ。」
「わかりました。それでは失礼しました。」
ということで教員室を後にした。教室に戻る頃には、大分、人が増えた。俺が席に戻ると、等が来て
「竜崎。お前、どこにいたんだ?」
「ちょっと、教員室に。」
「だったら、何聴きに行っていたんだ?昨日の事でもか?」
「まあ、そうだけど。」
「で、後は?」
「後はって?」
「いやだからさ、昨日の事、聞いたんだろ。だったらあの時に何があったかって聞きたくなるだろ普通。で何だったんだ?」
「魔力反応が出たとか、何とか言っていたけど。だから、気をつけろって言っていた。」
「なんで?」
「もしかしたら危険な事があるかも知れないからだと思うけど。」
「危険な事?それって大丈夫なのかよ。」
「俺は、そんなに断言は言えないが、ちょっと厄介な事にはなるかも知れないけど。」
「そうか。」
そんな時に、ホームルームが始まってしまった為、放課後、いつもの場所でということになった。そして、その放課後
「お待たせ、竜崎。」
「ああ。」
等は、この日に掃除担当だった為、俺が待つことになっていた。
「じゃあ、さっきの続きね。」
「わかった。えーっとどの辺までだっけ?」
「触りだけだった。」
「内容か、確か詳しい所までは聞いてないけど、やった奴は、気付かれないように結界張って、何かの魔法でもやっていたらしいけど、それ以上は聞いていないというか、話してはくれなかった。」
「ふーん、そっかぁ。」
「何かまだ、聞きたいようだけど、何か、あるのか?」
それから数分間黙って考え込んでから、
「まあいいや、何でもない。」
絶対、何か聞きたい事があったはずだが、俺がこれ以上、答えないと思ったなのだろう。実際、これ以上の質問は、あまり答えたくなかったし。それから等は、別の話しを持ち掛けて来た。
「竜崎さぁ。今日の夜、俺達で学校を調査しねぇーか?」
「調査?」
「そう、調査。」
「何の?」
「昨日の事だよ。」
「大丈夫かよ。」
「その辺は、竜崎だろ。」
「俺がか!」
「当たり前だろ。お前だって知りたいんだろ。だったらやるしか無いだろ。この際さぁ。」
確かに気になるが、あまり気が進まない。何か起こりそうで。でも、誘惑には勝てなかった。
「行くけど、少しだけだからな。何かやばくなったら、直ぐに逃げるからな。それでいいよな。」
「そう来なくっちゃ!分かった。やばくなったら逃げるだよな?」
「そうだ。」
「よし、それじゃあ、何時にする?」
「10時頃。」
「10時頃ね。分かった。後、校門前集合ってことでいいよな。」
「ああ。」
「じゃ、俺は一旦、家に帰るな。また後で。」
そう言って、帰って行った。
「誘惑には勝てねぇ。しょうがない。一旦、俺も帰るか。」
そんで一度、家に帰った後、また校門前に行く。今度は、等が先に着いて待っていた。
「等、待ったか?」
「いや、大丈夫だ。それよりも、早く入ろうぜ。」
という訳で今は、学校の校庭。事件があった場所だ。
「ここだったよな?何か感じるか?」
「確かに、魔力を感じる。だけど、この感じには、感じ覚えがあるんだけど、何だったかな?はっきりと覚え出せない。」
そんな時に、事件現場の魔力と同じ魔力が現れたのだった。その漢字は今までも何回か感じた事のあるものだった。
「まさか!」
振り向いた先には、あいつがいた。
「お前は、トラス!」
「何で僕の名前を知っているんだ?うん?…あっ、そうか!何だ人間の姿をしているだけか。また会ったな。」
「何でここにいる?それに昨日ここで、何をしていたんだ!」
そして、何かつぶやいている。
「僕の話しは無視か。まあいいや。」
「その答えは、言えないなぁ。それを言っちゃ意味ないからね。お楽しみにしておいてね。」
「誰が、お楽しみにしておいてねだ!いい加減にしろ!」
「嫌だね。」
そう言って飛び立った。
「まて!」
と俺が追い掛けようとしたとき、何かに引っ掛かった。
「うわぁ!何だ!」
よく見ると、何か細々と光っている。
「これは…何だ?」
「それは、君を閉じ込めておくものさ。」
「何だと!」
あいつに近づこうとしても、足に引っ掛かっているもののせいで、身動きが出来ないでいる。
「結界かよ。」
「その通り。まあ、そこからでも見学しときな。」
「くそ!」
その時である。
「また余計な真似を。」
「誰だ?」
「私は、ここの教師だよ。文句でもあるのか?」
「教師?そんな馬鹿な!この僕の結界を通り抜けるなんて!」
「そんなに驚いたか若僧が。まだまだだな。」
「何だと!それより、姿を見せたらどうだい!隠れていないでさ。」
「私は、逃げも隠れもしていないぞ?さっきから、お前さんの後ろにいたじゃ無いか。」
「え?」
あいつが後ろを振り向くと、新葉さんが立っていた。
「いつの間に後ろに!」
「だから、さっきから言っているじゃ無いか。最初から後ろに居たって。」
そして、フッと消えたかと思うと、すでに俺達の前に立っていた。
「あれだけ、気をつけろと行ったじゃ無いか。」
「すみません。」
「まあ良いけど。それより困るじゃ無いか!勝手に学校に復讐用の魔術をかけちゃ!」
「そんなの関係ない。僕はやりたいようにやるのみ。第一人間なんかがこの僕に反抗するなんて、何様のつもりだ。」
「それは、お前さんのほうじゃ無いのか?」
「何だと!」
「そうじゃないのか?私の正体が分からない奴が何を言っている?」
「人間じゃないのならば、何だっていうんだ。」
「神竜族さ。」
「神竜族だって?」
「そうだ。それにさっきも言った通りにここの教師だ。だから、通告する。訳の分からんようなことをするな。」
「ふん!そんなこと僕には関係ない。全ては人間共に復讐するだけだ!」
そう叫んで、あいつは逃げ去った。
「やっと追い払えた。困るんだよね。私だって仕事があるのだからな。お金もらっているんだから、全くもって迷惑だ。」
そんなこんだで、あっさりと事件が解決した。
その頃、場所が変わってあいつの住家。
「何だっていうんだ。あの神竜族だって言っていた奴は?聞いたことなんて無いぞ神竜族とか言う種族。それに何だったんだあの嫌な感じのオーラは?ただ者じゃないな。あんな奴なんかとは、関わりたくないなぁ。どうするか?」
それから1時間程度立ってから、ふと一言
「僕だって竜だ。あんな奴なんかに負けるわけがない!」
そして同じ頃、新葉さんのほうでは
「どこの奴だ?データベースを探しているのになぁ。こいつか?あ、こいつだ。」
探していたものは、星空竜族といわれている種族である。
「それで、たまたまこいつらが、この星に降り立った時に置いてきぼりを喰らったか、それか身無し子にだったのか。多分、後者の方が有力かな。そんで人間に見つかり、参考資料として、実験されていたのか。復讐したいのはよく分かるが、やり方はちっょとねぇ。困るな。こういうやり方はなぁ。」
さらに調べていくと
「これだな。」
そうして調べていくうちに、詳細な過去が判明していく。
「トラス・アルビッツ・イターニア。まだ120歳位の若僧だな。今から80年前だ。たまたま、星空竜族の一族共が、この星に訪れた時、すでに20年前に両親を亡くしていて、身無し子だったらしく、その時に群れから外れて居るところを、研究者達に見つかって、あの施設へと連れられたらしい。もちろん、今でも竜なんかの姿を見られたら捕まってしまうからな。そして、見ずからと同じような奴を作り出して、復讐とでも考えていたんだろ。だがしかし、竜崎はその実験三昧を逃れられた。計画が駄目になった訳だ。だからこそ、何を仕出かすか分からない。そんな訳だから、くれぐれも気をつけろよ。」
「そうだったのか。以後、気をつけます。それじゃ、俺はこれで失礼します。」
そういって、俺は電話を切った。
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