22:波乱の幕開け
脱獄犯の逮捕に協力した、その翌日。竜崎は、学校へと向かっていた。
「もう少しで、夏休みかぁ。何しようかな?」
今日の日本は、高校が全国でも130校しかなく、大学に関して言えば、34校しか無い。何故かと言えば、国土の8割りは人が住めるような状況じゃないからである。そのため、夏休みは2ヶ月もある。ちょうど来月の7月の始めから8月31日まである。
学校に着くとまず、職員室に立ち寄る。この日はクラスの委員長が、クラスの様子や要望を書いて、副校長にその書いた用紙を提出することになっているからだ。
「失礼します。」
副校長の席は、職員室に入って右側の一番奥の席である。その途中に新葉さんの席がある。今日もいつも通りに学校に来ていた。
「おはよう、竜崎。昨日の事はどうもね。」
「いいえ。俺はヒマだったので。」
「そうか。じゃあ、今日も頑張れよ、授業。」
「はい。それじゃ。」
そうして、必要書類を副校長に私に行った。
「副校長先生。」
「はい。何でしょうか?」
「クラス近状報告書の提出に来ました。」
「そうか。」
そして、報告書を渡す。副校長は報告書を一通り見渡してから
「うん。確かに受けとった。ご苦労。」
受け渡し終わり
「失礼しました。」
と言ってから職員室を後にした。職員室を出た後は、教室に戻る前にトイレを済ませてから、教室に戻った。それからは、いつも通りに時が過ぎて行く。こうして、平和な日々が戻って来ると俺は思っていた。しかし、そんな願いは届かず、波乱な日々が始まってしまうのだった。始まりは、最終時限目の6時間目が終わり、さあホームルームを始めるぞという時だった。
「ホームルームから席に着け!」
担任が教室に入った時、光る物体が落ちて行くのを俺が見つけた。
"何だろう?何か危険な様な。"
その時は、気には止めたがすぐに光りが消えたため、大丈夫だろうと判断した。しかし、その判断は一瞬にて崩壊した。
"ドン!"
という大きな地響きの後に、大きな揺れに襲われた。
「何だ!?」
教室にざわめきだつ。
「落ち着け!皆は教室待機だ。」
そう言って、教室から急いで出て行った。まだ教室はざわめいている。
「静かに。皆、先生が来るまで自習しろ。」
俺が指示を出したので、やっとざわめきが収まった。
教室のざわめきも収まりを見せた頃、俺はさっきの事を調査していた。目をつぶり、精神統一を図る。そして、調べた事は俺の脳裏に表示される。
『広域ネットワークに接続し、飛来物の探索を開始。』
こうすることによって、この世界中に存在している"センター"を使って、異変が起きた所や、どんなものがどのようにどうしたのかが、簡単に分かってしまうものである。
『Now access』
そのうちに、
『Connected sensor…』
というのに変わり、そして、
『Completed』
と出た後、異常が報告されている場所が示されている。
『町外れか。あそこは住んでいる人は居ないし、大丈夫かな?』
そう判断し、次の事を始める事にした。
次は、何が落ちてきたのかを調べる事にした。
『Data now loading』
そして、少ししてから落下物についてのデータが表示された。
『こ、これは…。』
そこに表示されていた内容は、ただの落下物ではないということだ。それは"Dragon"とだけ、表示されているだけであった。
『嘘だろ…こんなの。』
それ以外の言葉は出て来なかった。しかし、それだけでは無かった。そこに表示されていた、もう一つの内容は"次元際指名手配犯"と。
『次元際指名手配犯だっ…て?』
それも、お墨付きの凶悪犯。唖然とするしか無かった。
『どう、対処しろと言うんだ。こんな奴なんかとやり合えって!?無茶苦茶だろう。俺の力で、まだ自分のものにもできていないのにか?あんな力と戦えっていうのか。俺なんかに…。』
そんな事ぐらいしか、考えられなくなっているぐらいにうろたえて居るとき、聞き慣れた声が響いてきた。
『よっ、どうしたんだ?うろたえるなんて、君らしくないなぁ。安心しな。この俺がついててやるからな!どんっと構えていればよい。』
それは、新葉さんの声であった。その声は、俺に一つの安心感を与えてくれた。
『はい。有難うございます。』
『うん、それでよい。後の事は任せろ。何とかしてみるから。ただ、そんなには持つものではない。せいぜい持っても、3日程度の間、人々の目を騙すしか出来ないが。』
『いいえ。それだけでも良いですから。何とかしてみます。』
『そうか。それではまたな。しっかりやれよ。』
『はい!』
これでようやく、俺の気持ちは整った。後は来るべき災難に立ち向かうだけだった。ただし、それがどんなに辛いものになるのかは、まだ知るよしは無かった。この後、震源地不明の地震という事になり、事は一応、収まった。かなりの偽りだが。とりあえず学校側は、早く生徒を家に帰すという事になり、生徒は皆、さっさと帰って行った。その帰り道、
「竜崎君?」
「何、柊さん?」
「あの、家に行って良い?」
「うん、まぁ。でも、あまり片付けて、いないけど良いの?」
「私は気にしないから。」
「なら良いよ。」
という事になったので、初めて女子を自分の家に入れる事になる。親が居れば、はやし立てるのだろうが。
「さあ、上がって。」
俺に言われてから玄関から上がる。そこは、礼儀を重んじるドランス家だからこその礼儀だろう。それと彼女との立場の違いからも、そういった行動に結びつけられるのだろう。
「そこまで、気を使わなくてもいいから。」
「そうは言われても…。」
まだ言いたげな所を遮るように、話しを入れる。
「ここじゃ、身分は関係なくてもいいから。」
「はい。そうさせて貰います。」
「こんな口調でいいの?」
「まーね。で、話しが有るんでしょ?」
「うん。」
プリムは黙ったまま、縦に首を振った。
「で、話しは何?」
「さっき、何か調べてたでしょ。」
「そうだけど。」
「その時、どんな結果が出たの?竜崎君、一度唖然としたように見えたけど。」
「最悪な結果が出たんだ。多分、プリムも知っていると思うけど、次元際指名手配犯のヤザギス・J・サハジスラっていう奴。」
「っていう事は…。」
「そいつがやって来た。」
「うそ…。」
そこに重苦しい空気が流れ始めた。
「何とか、シンバさんが隠しているけど、3日ぐらいしか隠しきれないから、後は任せたと言われたかな。」
「大丈夫なの?」
「そこは、シンバさんも手伝ってくれるって言ってたから、多分は大丈夫だと思う。」
とりあえず、プリムも安心した様子だった。
「何か飲む?有るものはそんなに無いけど。」
「じゃあ、コーヒーはある?」
「インスタントなら有るけどいい?」
「うん。」
本当の事を言えば、二人とも、あまり喉は渇いてはいなかったが、あんまり空気が和んでいないので、それぞれで和める機会を待っていたのだ。これで話しを一段落つける事が出来た。
「はい、どうぞ。」
「有難う。」
こうして二人並んでコーヒーを飲んだ。やっとのことで周りに立ち込めていた、少し重苦しい空気が和んできた。そんな頃、今度はこれからどうするかを話し合う事にした。
「それじゃ、どうやって捕まえるの?相手は、相当危険な手段を使って来るかも知れないし。」
「う〜ん、そうだなぁ。」
少し考えて見たが、何の案も湧いて来ない。
「いい方法が浮かんで来ない。直接ならもう少しは、わかるけど。どんな奴なのかは、現場に行かなきゃ分からない。」
そんな時、いきなり電話がかかって来た。
「誰だろう?」
と、つぶやきながら電話の所まで行き、受話器を取る。
「はい、片治ですけれども。」
「おぉ、居たか竜崎。」
電話は、シンバさんからだった。
「シンバさん、どうしたんですか?」
「どうしたかじゃなくて、とにかく早く来て欲しいんだ。それにプリムさんも一緒にな。」
「どうしてそれを?」
「それは、彼女の親父に会ってきたからだよ。」
「そういう事ですか。」
「じゃあ、そういう事だからさ、早急にね。」
とここで、電話が切れた。話しの一部を聞いていた、プリムはすでに出る用意を済ませていた。
「それじゃ、早く行こう。」
「えぇ。」
俺も支度を済ませ、家を出た。シンバさんから伝えられていたのは、現地で落ち合う事になっている。
「ところで、竜崎君?」
「何か?」
「場所って、どこなんです?」
「Bブロックの12地区っていう所。」
「どんな場所何です?」
「簡単に言えば、廃墟っていう感じかな。」
「ふぅ〜ん。」
家を出発してから5分ぐらいで現場付近についた。ここは、今までの授業で習って来た事件の、日本で初めて起こった所である。
「着いたよ。ここだよ、現場は。」
「ここが?」
「あぁ、ここさ。」
「本当に、廃墟ばっかり。」
そう二人で話しているとき
「おーい。二人ともー。こっちだよ。」
向こうからシンバさんが俺達を呼んでいる。
「今から行きます。」
そう、先に返事を返しておいてから
「さあ、早く行こう。」
そして、シンバさんの元まで急ぐ。シンバさんの所まで行くと、いきなり風景が変わったのだ。シンバさんが張っていた、結界の中に入ったからだ。
「すごいですね。こんな結界も張れるですね。」
「まーねぇ。で、本題なんだけどさ。皆の記憶操作の方は任せとけ。今は楽だがアイツがいつ、目を覚ますかなんだよ。」
「寝てるんですか?」
「見ての通りに。来たら直ぐに寝ちまってね。だからこそ、今のうちに対策取りたかったから呼んだんだけど。」
「そうだったんですか。それじゃ早速、始めましょうよ。」
「それでは作成会議を始めよう。」
こうして、長い戦いの火蓋が切って落とされた。
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