23:思い出
始まりは何時だったろうか?あれは紛れも無く、とある春の日だった。
俺はいつも行っていた洞窟にいた。この洞窟の奥には昔、政府の特別な実験施設があった。しかし、それも突然に実験の中止が決定されて、この施設は破棄されたのだ。その後は放置され、そのままにされた。
そんな事で扉が閉められ鍵をかけられていたこの施設が、その日に限り開いていたのである。あれは罠だったかも知れない。その時にそんな考えなんてなく、ただラッキーだとしか思わなかった。そして冒険心だけで、その罠へと入って行った。その後、俺は長い迷路なのかと思うほどの廊下を歩き、とある部屋に入った。その部屋の中で、当時の政府が持っていた機密文章を見つけてしまったのだ。そこに書かれていたのは、昔にドラゴンの子供が飛来して来た時に、捕まえていろいろな実験を繰り返していた。一つの災いの種として。それが間違いだったのだ。その行いは自滅を促すだけであった。俺はその余波を受けてしまったのである。その余波によって、俺は人間から全く異なった、地球では外種、又は異形なる存在となってしまったのだった。
その頃、学校ではある集団がやって来たと言うよりも、不時着してきた。その集団の中に、ある意味の恩人である。逆に言えば、何だか別の事に巻き込まれてしまった。そんな事は、神竜族になることを決めた時に、覚悟は出来ていたし、今じゃそういう事に対しての耐性がついてしまったらしく、今は気にしていないから。その恩人こそ、シンバさんである。今は、俺の高校で教師としているが、本来は落下物が突然に消失してしまったのを、調査するために派遣されてきた調査団の隊長をしていた。
そんなシンバからは、どうして俺を選んだのかは、まだ教えてはくれないが、俺を神竜族という種族へとしてもらった。いろいろ調べてみたら、普通の竜族でも、人間の姿になれる事が分かり、何故その方法をとらずに、この様な方法の方をとったのかは、分からない。そんな事が会って、やっと人間の姿になれるようになり、学校の方も大丈夫だという事になり、次の日から学校に復帰した。
その後、学校で平和にやって行けるかなと思っていたが、それを次男坊こと、佐武先生によって有り難く打ち壊された。丁度、先生の趣味と合ってしまったのだ。爬虫類という事で。まぁ、それだけぐらいしか問題は無いので、良かったのだが。そんな中、運命的な出会いが訪れたのだった。出会いは、いつも突然にやって来る。そう、この時も。その日もいつもの様な日であった。そして、クラスのホームルームが始まろうとしていた。いつも通りに先生が教室に入って来た。
「新しい子を紹介する。」
そうして、紹介されたのが、プリム・セルシラ・ドランスであった。初めは、普通の女子だと思っていたが、実は全神竜や真神竜等の、高官ので補佐役をしている家の出身であった。それを知るのは、この学校にやって来てから少したった時だった。その日、
「ちょっと、付き合ってくれる?」
「いいけど、何で?」
「話し相手をして、ほしくて。」
「いいよ。」
そうして、指定された場所に向かった。そこで、彼女の真実を知る事となった。そしてもう一つ、大事な知らせが待っていたのだ。それは、彼女と出会って直ぐに、
「好きです。」
ストレート直球勝負の告白だった。これには、俺も泡を喰った。まさかの告白なんて、とその時はそう思っていたが、今ではそれが一番印象深く、記憶に残る事となるし。 そんな事で、一発で返事を返した。"はい。"と。
その後は、色々と自分達の事を話し合っていた。そんな楽しいひと時こそ、とても短く感じるもので、あっという間に時間が過ぎてしまう。そして時間には限りがある。それは、俺達とて同じ事。ついに、楽しい時間が終わりを迎えた。
「じゃあ、明日学校で。」
そんな挨拶と共に、別れて行った。そしてそこからは、いたって平和な日々が続いていく。こうして平和な日々が、続いていくと信じていた。だがそれは、最初はゆっくり、最後は突然とやって来るのだった。事の始まりは、プリムの家に、つき合っているということを報告するために、ドランス家邸宅へと訪れた時からだったのではないのかと思う様になってきた。あの時から、立て続けに事件が発生し始めた。
そして今、とんでもない事件が目の前にある。避けようにも避けられない巨大な壁。人生最大かは分からないが、今までよりは遥かに大きな隔たりである。この隔たりを打破するには、他人の力を借りるしか無い。そういう事で今、シンバさんとプリムと俺とで、どのようにしていけばよいのかを話し合っている所である。
「それじゃ、コイツが目を覚ます前にどうするかを、さっさと決めてしまおう。」
という事で、作戦会議が始まった。
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