28:己の世界で

学校の帰り、シンバさんから指定されていた、公園に30分ぐらい早く来てしまった為、暇を持て余していた。なので、どうして公園何かに呼び出されたか、考える事にした。まず、考えられる事と言えば、少し身勝手な事があるシンバさんである。故に、公園なんていう、人気の多い場所を選ぶ可能性も無い訳では無かった。そんな事を考えているうちに、シンバさんがやって来た。
「リュウキ。何をそのような難しい顔をしている?考え事ばかりしていると、老けてしまうぞ。」
「シンバさん。そんな事、あるわけ無いでしょ。」
「その通りだ。今、なぜ公園なんかに呼び出されたんだろうか、なんて考えて居たんだろ。そう、人目に付きやすい所で、地球が危ないとかいうことを、話し合う事をするのだろうかなんて、思っているんだろ。」
「そうですよ。分かって居るんだったら、そうしてくださいよ。」
シンバさんは、ニヤニヤしながら、
「では一つ、質問をしよう。何故、人っ子一人も居ないのでしょか?」
「え?」
そう言われて周りを見て、始めて気が付いた。いつもの、この時間には誰かしらたむろしている奴らがいるはずなのに、人一人も居ない。
「どういう事なんですか?何を施したのですか?」
「それは、人除けの結界を張っているから。」
「人除け?」
「そう、人除け。こうすれば人目に付かないだろ、一切。」
「はぁ。でも一体、何の為に公園にまで来て、やらなければいけないのですか?」
「理由は簡単。これから会議をしようとしているのは、この公園では無い。その場所は、リュウキが持っている己の世界。確かリュウキの世界は、次元番号21136580112番。その前の世界、つまり一つ前の番号の世界の事だが、その世界は俺が管理している世界だったりする。」
「へぇー、それで何なんですか?」
「それで、そのリュウキの世界で、会議をすることになる。それと、特訓をしたいと思っている。期間としては、1週間を予定しているが。」
これを聞いて驚いた。1週間も、学校を休む事になるからだ。それに対してシンバさんが付け加えて、
「一週間といえども、実際には1時間だから。」
「あっ、そっか!そうだったな。」
時間はある意味、好きなように操作が出来る事を忘れていた。
そうして時間が過ぎ、集合の時間になった。
「良く集まってくれた。」
シンバさんから言葉があった。
「ここに、集まってもらったのは言うまでもなく、会議をするのだが、ただ会議をするのもつまらないので、1週間だけ特訓を行うことにする。それが今回、皆に集まってもらった訳だ。今から質問を受け付ける。何か無いかな?」
「あの〜。」
「はい、プリムさん。何でしょうか?」
「1週間もの間、束縛されるのですか?学校とかもあるし。」
「それについては、ご安心を。今回の会議場所はこの公園では無く、リュウキの自己世界にて行うので問題はありません。」
「そりゃー、どういう事っすか?」
「せ・ん・ば君?君は何を言っているのかな?まさか、神竜族とあろう者が自己世界の事を分からないなんて言わないよね。先番 磯吾郎君。」
「いや、大丈夫っすよ。そんなことぐらい。」
あからさまに忘れていたようだった。
「まあ、いいや。じゃあ、質問は無いようだし、早速だが、開いてね。」
と、シンバさんは俺に振ってきた。
「え?あっ、はい。」
それから、さっきシンバさんから教わった事を思い出す。
"えーっと、まずは、入り口を思い浮かべて。"
そうすると、地面に紋章が描かれ、淡く光る。そして音も無く、なにかが地面から出て来た。
「おーぉ!」
シンバさんが何かに驚いている。何かなと思い、前を見てみると、そこにはエレベーターの入り口見たいなのがあった。
「これが、俺の自己世界への入り口。」
現れたのは、エレベーターの入り口。
「リュウキ、お前が始めてだよ。エレベーターが外界からの入り口なんて。見たこと無いな。」
「そういう物なんですか?」
「乗り物系は少ないが、特にエレベーターなんて聞いたこと無い。」
これに、俺は小さな声で、
「そうなのか。」
と、つぶやいていた。
「珍しい事は置いといて、早く行こう。ぐずぐずしてると日が暮れてしまうぞ。そういう事だリュウキ。道を開いてよ。」
「あっ、はい。」
そして、入り口まで近づき、下行きのボタンを押す。30秒程で、エレベーターが上がって来た。
"チーン。"
いかにも普通のエレベーターの様に、扉が開く。それに対してシンバさんは、
「普通だな。」
それに対して俺も、
「普通ですね。」
とコントみたいになってしまった。
「乗ろう!みんな。」
なんだかんだで、あやふやになってしまったが、やっとのことで入ることになった。エレベーターに皆が乗り込んだことを確認し、俺は内界へと下りるボタンを押す。
"チーン。"
ドアが閉まり、音も無く下っていく。そして1分程度で内界に到着した。
「ここが俺の世界。」
初めて見る、己の世界。そこはまだ原始的な風景が広がっていた。
「さすがに生き物とかは、居なそうだな。まあ、出来たばっかだし。それよりリュウキ。」
「はい?」
「この世界の中央管理局に行かなきゃ。そこが今回の会議場だ。」
「わかりました。こちらです。」
初めから知っていたように、すぐに中央管理局までの行き方が出て来る。それだけではなく、この世界全ての事が分かる。
そして、たどり着いたのは、大きな岩山である。
「ここなのか、入り口は?」
「はい。」
とある場所に立つ。すると、岩肌に一筋の光が走り、そこが開いていく。
「成る程。決まった人にしか開かないタイプか。」
シンバさんは一人で納得している。
「どうぞ。」
皆を中へと入れる。中は広々とした、シンバさんが居る所と同じ様な感じである。さらに進むと、
「今度は、列車ですか。」
今度は、電車らしい乗り物であった。
「これに乗るの?リュウキ君。」
と今まで口を開いて来なかったプリムが俺に聞いてきた。
「そうだけど、どうかした?」
「いいえ、聞いて見たかっただけよ。」
「そうか。」
俺達二人の様子を見ていたシンバさんが、
「仲がよろしいのは結構だが、そろそろ行かないかなぁ?」
「すみません。」
「これは失礼しました。」
と謝り、ホームにすでに止まっていた列車に乗り込んだ。と、ここで問題が発生する。シンバさんが、
「リュウキ、お願い。」
「え?やり方知らないですけど。」
「嘘!動かし方知らないのか?」
「そうですけど。行きたい所を言えばいいんじゃないですか?」
「そんなものだけで、いいのか?」
「そんな感じがします。」
「相当アバウトだな。」
「しょうがないでしょ。俺自信なんだから。」
「それも、そうだが。」
そんな事ばかり、やっていると、ドアが突然閉まり、そして動き出したのだ。
「普通だな。」
「そうですね。あまりにも普通でした。」
そういう事で、ひとまず一つのもめ事なのか、それても違うのかもわからない事が終わったのだ。そして、列車は暗い中を突き進んで行く。それもすぐに終わり、明るき光の元へ出るのだった。



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