29:会議

着いた場所は、中央管理局前という駅である。駅の前には中央管理局の本部ビルがある。俺達は、管理局ビルに入った。
『おー!』
感嘆の声が響いた。中はまるで超巨大な高級ホテルのロビーのようで、ここが管理局本部に居る事を忘れてしまう程である。
「凄いですね、リュウキ君。」
と、プリム。それに続いてシンバさんが、
「確かにこれは凄すぎる。管理局本部とは思えない。」
それに続けとばかりに、
「俺、ここみたいな所で働いてみたいっすよ。」
「私には、ちょっと無理かも知れんな。」
と、いろいろな感想が出て来る。何と無く恥ずかしい気分であった。ビルの中を歩くこと10分。ようやく、目的の場所に着く。そこは、"第1会議室"という所である。扉を開けるとそこは、会議室というよりは、大学の大型講義室と同じようである。
「リュウキ。」
「はい?何ですか、シンバさん?」
「これより小さい所、無いのか?」
「ありませんけど。」
「無いのか?」
「はい。」
「なら、仕方ないか。良し、皆。好きな所に座れ。会議を始まるぞ。」
そして、闇に対しての対処方法についての、会議が始まったのだ。議長にはシンバさんを置き、副には俺を置いて始まった。
「今回、闇の力が増大してきた事がわかり、究極、調査を行った結果、分かった事が二つあった。それは、この現象の中心と、原因である。中心については、議論する必要は、今の所は置いといて、最初に話し合うのは、その原因についてである。いいかな?」
シンバさんは一度、確認を取る。皆からの同意を確認して、
「では、原因について説明する。最もの原因は、今まで封印していた者が、力を再び持ちはじめたからである。その為、我々としては、再封印を行う事にある。ここまでは理解してくれたか?」
『はい。』
「それでは、本題に入るが、今回使用する封印術は、今後の事も考えて、"Death of the key"を使う。」
ここでナダニエルさんが、
「シンバ様。それはやり過ぎだと思います。」
「そうか?」
「あの、その封印術っていうのは、どういう物なんですか?」
「それは恐ろしい封印術の一つで、この封印術の最大の特徴は、相手の命を喰らって、封印術の魔力として使うという事。すなわち、これで封印されたら命は、無いという事さ。」
「命が無くなる?」
驚きであった。普通、封印というのは、危険なものが出て来ぬ様にするための封であって、殺すための物では無い。
「でも、そういう物に限って、術者にも相当の負荷がかかるのでは?」
「確かに、この封印術は相手の命を奪うだけでは無く、術者の命も奪ってしまう程の危険な物だ。しかし、これはあくまでも一般的な話しだ。」
「え?それはどういう事なんですか?」
「簡単に言えば、魔力などがあまりにも余ってしまう者達には、多少の負荷はかかるが、そう簡単に死ぬっていう物じゃない。」
「という事は、シンバさんは今までに必ず、1回はやった事があるのですよね?」
こう問い掛けたら、案の定、やった事があるるらしい。
「何回程、やったんですか?」
決まり悪そうに、
「100回ぐらいは…やったかな?」
「100回も…、やったんだ。」
さすがという所か。俺よりも何億倍も生きているだけはある。これでも良い方なのだろう。
「あ、だけど、完全な術式では一度も、やった事は無いよ。最高でも50層までだけど。」
「50層って?」
「それは、この封印の特徴の一つ、全く異なる術式を重ねて一つの術式とするという事。だから、相手によって、封印術の強度を変えることが出来る。だけど、一つ一つの術自体が強力だから、普通の者ならすぐに死んでしまう。」
「凄いんですね。」
「だから、次元管理責任者10人の承認と、最高管理責任者の承認を貰わねば、発動は許されていない。だけど、そこで許可をとっても、使用する次元管理者の承諾をとらないと、実際には発動出来ない。だから、リュウキ。君が決める事になる。遅かれ早かれ決めなければいけない。そこは理解しといて。」
「覚えておきます。」
俺は一種の責任感を感じていた。自分の選択によって未来が大きく変わってしまうのだ。
「で、そういう危険な封印を使って、やらなければいけない相手というのは、今から105億年前にあった事件の主犯格であった3人、他の言葉に言い換えるなら、闇の三帝。アガギ、ラスチ、フマールの3人だ。」
この主犯格の3人は、闇を操り、そして闇と成す者達。そして、最も扱いにくい存在であった。世界の均衡を保つため、強力な通常封印をされたのだった。しかし、昔の話しである。その時に管理責任者がいなかったからであった。今は、管理責任者がいる。そのため、今回は前回とは違う方法を取ることになった。さすがに、いきなりは殺す事が出来ない。世界の均衡が崩壊してしまうからだ。そういう事で、新たに扱う封印術"Death of the key"を習得の訓練をすることになった。会議は、説明と今後の事について話し合われて終わった。なので、後は特訓だけなのである。

そして場所が変わり、ここは第25屋内演習場。対強力魔法用の特殊施設である。
「何から始めるんですか?」
「そうだな。まずは、術式の暗記からかな?めんどくさいけどさ。言っとくけど、この術式は10人で1万の式を組み立てなければ、いけないんだけど、実際に組めるのは、私達2人しか居ない。だから、通常5倍を覚えなければいけない。大変なのは分かっているが、そこのところは頑張ってくれ。私も出来るだけ協力しよう。いい覚え方を教えるから。」
「お願いします。」
「良し、では…。」
こうして、俺の特訓が始まったのだ。最初は術式の構成を覚える所からだ。
「最初の1000個の式は、封印術の構成についてを記述されている。次の9000個の式が本体にあたいする。」
「そういうのを重ねて行くんですよね。」
「そう。そして、その塊づつに役割が決まっている。1番目は、ただの封印。2番目は、強力用封印。3番目は、対闇用封印。4番目に、対光用封印。5番目に、内部攻撃用封印。6番目は、外部攻撃用封印。7番目は、次元封鎖用封印。8番目には、エネルギー干渉防止用封印。9番目は、補助封印。そして最後の10番目の封印は消却封印。最後の消却封印は、封印物が消滅すると、この封印が封印術式を破壊するためのもの。必要でも無いのに、置いとくのは無駄だし、封印術式の力を悪用されない為にも消しておく必要があるから。今の所も大丈夫だよね?」
「はい。もちろん。」
「それじゃ、次行くよ。」
「お願いします。」
「では、これから君の脳内にデータを送る。それを覚えて置いてくれ。私が手伝えるのはとりあえず、ここまで。それ以降で手伝えるのは、実戦訓練の時までは無いからな。後は君次第だから、頑張れよ。出来たと思ったら私に言ってくれ。テストしてよかったら、次の実戦訓練に移るからな。」
「分かりました。」
俺の記憶力との戦いが始まる。これに2日間も使ってしまった。



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