32:本当の敵
トラスは、そのあと1日程で体の傷も癒えた。それからシンバさんに、人間の姿になる方法を教わったようだった。
「後は、本体待ちか?」
「そうですねって、シンバさん!いつから居たんですか?」
「え?あ〜、リュウキが何か思いに更けはじめた頃からさ。」
「居るんだったら、声くらいかけてくださいよ。」
「それは悪かった。気をつけるよ。」
俺は再び、空の方に目を戻す。
「それで、シンバさん。今回は何を話しに?」
「そう!その事だが、奴らがついに、この太陽系の中に入って来た。」
この事を聞いて、俺は驚いて、さっとシンバさんの方を向き直す。
「それって、もう少しで敵の本体が、この地球にやって来るという事ですよね?」
「そういう事だな。」
「もう、かぁ。早いもんだな。」
「そうだな。まあ、俺達は少しばかり、長い時間を過ごして居るから、実際のこの時間とは、1週間程の誤差はあるけどな。」
「あっ、そういえばそうだった!忘れてた。」
「大丈夫さ。始めは皆、そういう反応だから。いづれは慣れるよ。」
「そうですよね。」
それから1時間くらい経った時だった。相変わらず厚い雲が覆い、地上が薄暗いというのに、さらに暗くなっていくのだ。
「何だ?大分暗いな。もしかして、ついに到着したのか?シンバさん、これって…。」
「あぁ。奴らがやって来た証拠さ。まずは警報を発令するぞ。」
「はい。」
そして、管理システム全体に警報が発令された。これにより、この世界全体で起こっている事を、外界の者達にも伝える為である。
「これで終わりだ。そろそろ出迎えの準備をするぞ。早くしないと、相手から仕掛けて来る可能性があるからな。」
「はい。分かりました。」
「あと、プリム。」
「はい。何でしょうか?」
「やって貰いたい事があるんだけど、頼めるか?」
「もちろんですとも。」
「なら…。」
そして、シンバさんはプリムに指示を伝えた。
「なら、頼んだよ。」
「行って参ります。」
そうして、プリムは俺達とは別行動に移った。そしてついに、奴らが俺達の目の前に現れたのだ。
「神竜共、ようやくお前達を闇へと落としめる時が来た。楽しく待っていろ。」
真ん中の奴が言う。それに続き、
「ケケケッ、そう楽しくね。」
と、左側の奴が変な笑いと共に付け加えてきた。
「それが、お前達の野望か?」
俺が奴らに向かって質問する。それに対して、
「その通りであって、その通りではない。」
と返してきた。
「どういう意味だ!」
「そんな事を話すような馬鹿では無い。」
そう簡単に教えてはくれない。当たり前だが。
「あと一つ教えてやろう。この星に起きてきた事件。例えば、この星の均衡が異常なまでに狂い始めさせたのは、我々のした事だとな。」
この時、俺の中でなにかが弾けた様な気がした。
「おい、待て!まだ話しがある。」
勝手に口が動いていた。
「ほーお。良いだろう。この際、落ち行く者達の話しを聞いてやろう。」
「トラスを闇に引き込んだのはお前らか?」
「トラス?あぁ、あやつか。あやつも馬鹿だな。小さい時に親と離れ離れしたのが、我々の仕組んだ事もわからず、ただの怒りだけで、無駄な復讐とかやつをやって。見ていて滑稽だったがな。これで十分か?」
そんな時だった。
「貴様ら!」
そう言って、トラスが奴らに突っ込んで行った。
「無駄な事だ。」
真ん中の奴が横に一振り、手を振る。それに伴い衝撃波がトラスを襲う。衝撃波をまともにくらい、トラスは1キロ近く吹き飛ばされた。
「それでは、また会おう。」
そう言うと、暗がりの中に消えていった。
「行ったのでしょうか?」
「多分な。」
俺のつぶやきにシンバさんが答えてきた。
「あの、先程プリムに何を頼んだんですか?」
「その答えならもうすぐ来るよ。」
そして、シンバさんが顔を向けた方向を向く。そこには、トラスが伸びた状態で何かに引っ掛かっている。
「何を張ったんですか?」
「ちょとした新製品。」
「そうですか。あっ!それよりも。」
俺はトラスを助けに向かう。
「おーい、トラスっ!しっかりしろ!」
大声で、呼び掛けてみる。
「うっ。」
小さくうめき声を上げてから目を開けた。
「大丈夫かトラス?」
「お前何かに心配かけられる筋合いは無い…、と言いたいけど、僕の力じゃ無理だ。だから…。」
一息置いてから、こう切り出した。
「だから、お前達と手を組む事にする。だけど一時的な物だからな。間違えるんじゃ無いぞ。」
「当たり前だ。こっちから願い下げだ。だけどそれまでは、よろしく頼むぞ。」
こうして、トラスとの共同戦線が張られたのだ。
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